<変化>で読み解く東京の魅力コラム(2) 

   前回のコラムでは、人口増加し続ける東京の内部でみられる集住地区の空間構成を捉えました。
東京をまるごと捉えた眼でみてみると、
人口増加と人口集中<東京のごくかぎられた一部のエリアで起きていること>
つまり、東京の内部で大きな空間的な格差を内包して集住地区が形成されていることを確認しました。

 第二回目の今回は、集住の<中身>についてとくに、
「単独世帯で構成される東京の未来」に焦点をあてて分析を進めていきます。
まず、東京という都市は、いったいどのような世帯形態によって構成されているのでしょうか。東京都の家族類型別世帯数の推移をみてみます。

2015年、東京で暮らす単独世帯は、309万世帯です。その割合は、46.5%です。
東京暮らす人の約半数は、1人で生活しています。

 東京は単独世帯都市と呼んでも過言ではありません。
地価の高騰や生活様式が、「都市の単独世帯化」を助長してきたのですね。
 
 
 1208①

出典:http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/tokyo_vision/vision_index/pdf/honbun1.pdf

ちなみに、大阪府に住む単独世帯は65万7,205世帯で、一般世帯に対する割合は、48.7%です。(平成27年国勢調査 : http://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000379310.html

この単独世帯都市の傾向は、今後数十年は確実に続いていきます。
2,060年の東京は、1人で暮らす人が半数近く(47.7%)になります。

 
今の都市的生活様式が抜本的にかわらない限り、<半数が一人暮らし>というのが東京の特徴なのです。

では、この単独世帯の年齢構成についても掘り下げてみていきましょう。
単独世帯の年齢構成に着目すると、2015年から2060年にかけて、東京は大きな「変化」を迎えます。

2015年、65歳未満の単独世帯数は229万世帯で、その割合は74.1%です。
それが2060年になると、151万世帯と減少し、その割合は55.5%になります。

その間に、65歳から74歳の単独世帯の割合は、11.9%から13.8%に増加し、さらに75歳以上の人口は、13.6%から30.6%へと激増します。
 1208②
出典:http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/tokyo_vision/vision_index/pdf/honbun1.pdf

つまり、東京で生活する単独世帯の超高齢化がこれから急速に進んでいくことになるのです。

言い換えると、2060年にむけて東京は、超高齢単独世帯都市化の道を辿っていくことになります。

 さらに、65歳以上の単独世帯と夫婦のみ世帯の推移に着目しても、単独世帯の増加率が高いことが一目瞭然です。
もちろん、高齢化に伴う死別にとって夫婦のみ世帯が単独世帯化することも推測されるので、この傾向は歯止めがかかりません。

1208③

出典:http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/tokyo_vision/vision_index/pdf/honbun1.pdf


超高齢単独世帯化する東京の生活様式

 これらの特徴を踏まえると、これからの東京の住まいをめぐるイメージが湧いてきますね。

 明確に言えるのは、「高齢者に優しい住居」のニーズの増加です。
階段で複数階まで上り下りするアパートではなく、エレベーター付きの物件を希望するはずです。
1人で暮らすのに、戸建ての居住スペースは必要ないので、今後はさらに一人暮らしに適したサイズ感の1Rタイプの需要が増えることが予想されます。

 現在、1Rタイプのマンションに求める付帯サービスとして、オートロックや監視カメラ等の「セキュリティ」が上位にランクしますが、これからはそれらに加えて、「高齢者に優しい」サービスを兼ね備えた、あるいは、今後そのようなサービスを適応させていくことのできる住居を選んでいくことになるのではないでしょうか。

 世帯別類型の「変化」から推察される東京は、超高齢単独世帯の人たちにとっていかに快適であるのか、そして彼ら・彼女達がどのようなライフスタイルを生み出していくのか、そこにフィットする形で未来をデザインしていくことになりそうです。

 ちょっと、他人事のように記述をすすめてきましたが、2060年、生きているとすれば、私は83歳になります。東京で激増する75歳以上の年齢階層を占める一人でもあります。

 これからの東京の未来を考えていくことは、わたしたち一人一人の生活デザインにも直結することだともいえるのです。

 <終の住処>である東京が、いかにわたしたちにとって優しいものであるのか、この視点で次なるイノベーションが生まれてくるはずです。

 では、次回お会いしましょう。

   前回のコラムでは、人口増加し続ける東京の内部でみられる集住地区の空間構成を捉えました。
東京をまるごと捉えた眼でみてみると、
人口増加と人口集中<東京のごくかぎられた一部のエリアで起きていること>
つまり、東京の内部で大きな空間的な格差を内包して集住地区が形成されていることを確認しました。

 第二回目の今回は、集住の<中身>についてとくに、
「単独世帯で構成される東京の未来」に焦点をあてて分析を進めていきます。
まず、東京という都市は、いったいどのような世帯形態によって構成されているのでしょうか。東京都の家族類型別世帯数の推移をみてみます。

2015年、東京で暮らす単独世帯は、309万世帯です。その割合は、46.5%です。
東京暮らす人の約半数は、1人で生活しています。

 東京は単独世帯都市と呼んでも過言ではありません。
地価の高騰や生活様式が、「都市の単独世帯化」を助長してきたのですね。
 
 
 1208①

出典:http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/tokyo_vision/vision_index/pdf/honbun1.pdf

ちなみに、大阪府に住む単独世帯は65万7,205世帯で、一般世帯に対する割合は、48.7%です。(平成27年国勢調査 : http://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000379310.html

この単独世帯都市の傾向は、今後数十年は確実に続いていきます。
2,060年の東京は、1人で暮らす人が半数近く(47.7%)になります。

 
今の都市的生活様式が抜本的にかわらない限り、<半数が一人暮らし>というのが東京の特徴なのです。

では、この単独世帯の年齢構成についても掘り下げてみていきましょう。
単独世帯の年齢構成に着目すると、2015年から2060年にかけて、東京は大きな「変化」を迎えます。

2015年、65歳未満の単独世帯数は229万世帯で、その割合は74.1%です。
それが2060年になると、151万世帯と減少し、その割合は55.5%になります。

その間に、65歳から74歳の単独世帯の割合は、11.9%から13.8%に増加し、さらに75歳以上の人口は、13.6%から30.6%へと激増します。
 1208②
出典:http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/tokyo_vision/vision_index/pdf/honbun1.pdf

つまり、東京で生活する単独世帯の超高齢化がこれから急速に進んでいくことになるのです。

言い換えると、2060年にむけて東京は、超高齢単独世帯都市化の道を辿っていくことになります。

 さらに、65歳以上の単独世帯と夫婦のみ世帯の推移に着目しても、単独世帯の増加率が高いことが一目瞭然です。
もちろん、高齢化に伴う死別にとって夫婦のみ世帯が単独世帯化することも推測されるので、この傾向は歯止めがかかりません。

1208③

出典:http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/tokyo_vision/vision_index/pdf/honbun1.pdf


超高齢単独世帯化する東京の生活様式

 これらの特徴を踏まえると、これからの東京の住まいをめぐるイメージが湧いてきますね。

 明確に言えるのは、「高齢者に優しい住居」のニーズの増加です。
階段で複数階まで上り下りするアパートではなく、エレベーター付きの物件を希望するはずです。
1人で暮らすのに、戸建ての居住スペースは必要ないので、今後はさらに一人暮らしに適したサイズ感の1Rタイプの需要が増えることが予想されます。

 現在、1Rタイプのマンションに求める付帯サービスとして、オートロックや監視カメラ等の「セキュリティ」が上位にランクしますが、これからはそれらに加えて、「高齢者に優しい」サービスを兼ね備えた、あるいは、今後そのようなサービスを適応させていくことのできる住居を選んでいくことになるのではないでしょうか。

 世帯別類型の「変化」から推察される東京は、超高齢単独世帯の人たちにとっていかに快適であるのか、そして彼ら・彼女達がどのようなライフスタイルを生み出していくのか、そこにフィットする形で未来をデザインしていくことになりそうです。

 ちょっと、他人事のように記述をすすめてきましたが、2060年、生きているとすれば、私は83歳になります。東京で激増する75歳以上の年齢階層を占める一人でもあります。

 これからの東京の未来を考えていくことは、わたしたち一人一人の生活デザインにも直結することだともいえるのです。

 <終の住処>である東京が、いかにわたしたちにとって優しいものであるのか、この視点で次なるイノベーションが生まれてくるはずです。

 では、次回お会いしましょう。


田中 研之輔氏(社会学者)

1976年生まれ。法政大学教授 博士(社会学)。一橋大学大学院修了。日本学術振興会特別研究員(DC/PD:一橋大学 SPD:東京大学)。メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員を歴任。
<変化>に着目した「空間-行動」分析を得意として、<東京>の魅力分析を続けている。著作には、『都市のリアル』『丼家の経営』『都市に刻む軌跡』『走らないトヨタ』『先生は教えてくれない大学のトリセツ』『覚醒せよ、わが身体』他。セミナーや講演会数も多数。個人でも投資を行い、企業顧問もつとめる。株式会社ゲイト社外顧問。